カリフォルニアのカルトワインの始まり ~「The Eagle has landed」鷲は舞い降りた~
今回はカリフォルニア、ナパを代表する大御所のカルトワイン、スクリーミング・イーグルの始まりと現在の話をしましょう。
数々の偉人から始まった
1986年、不動産で成功したジーン・フィリップス女史が、23ヘクタールの“Little Stone Winery” を創設したことからカルトワインが始まります。ワイナリーはナパのオークヴィルの小高い丘にあり、複雑な土壌の畑はその丘の西斜面に広がっています。
当時、ジーン氏は友人であったロバート・モンダヴィ氏に醸造家の紹介を依頼しました。そして、ロバート氏がコンサルタントを行っていたピーターソン氏に話したところ、彼の娘であり、のちに「ワインのファーストレディー」と呼ばれる、ハイジ・ピーターソン・バレット女史(Jones Family Vineyardsの初代醸造家)を紹介してもらいます。これが、偉大なるワインとの出会いとなったのです。ハイジ氏の夫が、ナパの著名なシャトー・モンテレーナ(「パリスの審判」でシャルドネで1位を獲得)で醸造家をしていたボー・バレット氏であることは、多くの方が知っているかもしれません。
そして、1992年に初ビンテージの”Screaming Eagle”(スクリーミング・イーグル)がデビューしました。このカベルネ・ソーヴィニヨンはロバート・パーカー氏の評価で99点を獲得、その他の評価機関からもパーフェクトの評価をとり、まさに「鷲は舞い降りた」となったのです。蛇足ですが、この1992年のデビューワインは、最近のオークションで500,000ドルの値がつきました。
ジーン氏とハイジ氏のタッグで始まったワインは、1997年、2007年、2010年と2012年にパーカー・ポイントでパーフェクトの100点を取り、「カルトワイン」の圧倒的なステータスを不動の物としました。発表当時50ドルであったワインは、今や日本では約60万円の小売り価格となっています。(海外では平均単価約3,000ドル)限定した少量生産と高評価が招いた結果です。
入手は非常に困難
このワインは、会員制のステラのように、登録した会員へだけの販売(メーリングリスト)というスタイルを昔からとっていて、今も変わっていません。年間400~700ケースのみしか造らず、また会員登録もウェイティングリストとなっています。現在の醸造家であるニック・ギスラソン氏いわく、購入できる日が来るのは12年後くらいとのこと。一般小売に回るごくわずかな本数は異常な値段になっていて、メーリングリストで購入するのが一番良いのですが、いつになるやら。
ちなみにジーン氏は2006年に現オーナーであるスタン・クロエンケ氏にワイナリーを譲渡しています。醸造家も、2010年に有名なアンデイ・エリクソン氏(Arietta Wineの醸造家)、ミシェル・ロラン氏から現在のニック氏に世代交代しています。
ところで、この若い現醸造家はラガービール作りにも挑戦しています。2020年の秋に初リリースした“ HANABI(花火)”という名前のビールは、美しい日本の花火の絵が描かれているラベルが施されています、90ドル/6本で、これまたメーリングリストに登録した会員にのみ販売しています。それ以外ではナパの三ツ星レストラン、フレンチ・ランドリーにて飲むことが出来ます。これなら私も飲めますね。ただし、レストランに予約できれば、の話です。
ナパには400以上のワイナリーがあり、我々が紹介しているようなカルト系ワインも沢山ありますが、毎回銀行預金残高を気にしないで購入出来る優秀なワインもあります。最後に、私自身ナパにて“スクリーミング・イーグル”を二度飲んでいます。感想は?それはまた次回ゆっくりお話ししますね。ご期待を!