長いトンネルを抜けると雪国であった
タイトルは、有名な川端康成の小説冒頭の文章です。とあるサラリーマンがこの文章を基に例え、「しかしこの長いトンネルを抜ける前に落とし穴があったり、鉄砲水が出たりと、トンネルを抜けても美しい雪国ではなかった・・・・」と熾烈な現役時代を振り返り、ぼそっとつぶやいた姿が今でも心にに残っております。つまり「事前に自分が持っていたイメージと実際は違った」と言うことはワインの世界にも起こる事なのです。
ワインの違いを楽しむ
同じブドウ品種でも味や香りなど他の違いがあるということは、国や地域の環境条件などが異なると起こりえます。それはブドウの育った土壌や気候の違い、そして作り手の個性(醸造方法など)がそこに加わるからなのです。
ずいぶん前ですが、UCデイヴィス校のウインクラー博士がブドウの生育上、最も大事な要素は“温度”であるという発想から、世界の産地を積算温度(4月1日~10月31日までを測定)により五つの地域に分類しました。日本の甲府なども入っております。つまり、日本で醸造された国産のシャルドネが、仏ブルゴーニュのシャブリ(キメリジャン地層で育った)とは違う味、香りなどを持つということは当然起こりうることなのです。そして、先の説明を読むとお分かりの様に、自分が事前に持っていたシャルドネ種のイメージとの差があるのは当たり前なのです。だからと言って、一概に異なるから品質が劣るワインだとも言えないのです。それが個性なのですから。